今 ――私の脳天には銃口が押し付けられている。
数時間前、ニューメキシコ州を騒がす凶悪殺人犯の潜伏先を突き止めた私は現場に向かった。
同じステイツの同僚刑事の救援を受けて…私はついにこの女に手錠をかけたのだ。
その女は今 ――私の足元で頭に風穴を開けて転がっている。
私の目の前には ―――つい先程無抵抗の犯人を撃ち殺した、虫も殺せぬような同僚の女刑事が
見たこともないような恍惚とした顔で私に銃を向けていた。
チロリ ――彼女のピンク色の舌が唇を舐め、悩ましげな息を吐く。
それと同時にその指が拳銃の引き金を引いた。
「チッ!!…クソッタレ!!」
何が、起こったのだ。
突如視界が閃光に包まれたと思ったら…同僚は体制を崩し、彼女の口から今まで聞いたこともない様な罵り声をあげていた。
私の頭から数センチずれた壁に弾痕が空き、そこからゆらゆらと煙が吹き出している。
私は ――助かったのか?
「おい、何をしている。ホットな穴開きチーズになりたいのか」
男の声に、呆けていた私の意識が覚醒する。
考えるより早く、私の腕は銃を抜き、私の目は同僚の姿を追った。
長年かけて染み付いた ―――『刑事』としての動きだ。
だが…その時にはもう、あの同僚は私の乗ってきたパトカーを奪い逃げ去った後だった。
「フェイザーの射程外か。仕方ない…追うぞ、君」
何がどうなっているのかを理解する前に、私は見知らぬ男と逃げた同僚を追跡した。
「逃げられてしまったか。実に残念だ」
数十分後、私達は同僚を見失った。
署に報告する傍ら ―――私はようやく追跡を共にした見知らぬ男の事情を聞き出せたのだった。
「私の名は『エックス』。ニューメキシコ州を担当するハロウィンの特殊捜査官だ」
「そして私はこの星の人間じゃあない」
「いわゆる…『異星人(エイリアン)』というヤツだ」
―― ―― ――は?
たっぷり2分考えた後、コイツが何を言っているのか全く理解できない事に気付く。
「眉毛が外角に釣り上がり、開いた口の中から歯を軋ませているな。ふむ、その表情」
「なるほど。つまり君は、私の事を全く信用していないようだ」
オーケー、私の事を理解してくれているようで何よりだ。
コイツも檻にブチ込むか ――そんな事を考えていた時。
男の頭部からまるで這い出てきたように ――『何か』が飛び出した。
緑色に輝くその気持ちの悪い物体は、人間の様に仰々しくお辞儀をした後 ――男と同じ声で喋りだした。
「これで信じてくれたかな?刑事君」
吐き気を堪えながら必死に状況を整理した所。
どうやらコイツと、そして逃げた同僚には『エイリアン』が取り憑いてるらしい。
最悪なことに同僚に寄生したエイリアンは、スナック感覚で大量殺戮を行う快楽主義の犯罪異星人(クソビッチ)だと。
『Zee』 ―――それがアイツの名前だ。
エックスは『Zee』を追ってこの星へとやってきた『異星人(エイリアン)のエージェント』なのだ。
――頭が痛くなってきた。唯でさえ人間の犯罪者(碌でなし)共を相手にするので忙しいというのに。
だが ――凶悪犯をこのまま野放しにはしておけない。
アメリカ警察(ポリス)のバッジにかけて、それだけは唯一 ――確かなことだ。
「私の種族にとっては、この地球がどうなろうがさして関係はないのだが」
「私自身は…結構気に入っているのだ。この碌でもない楽園と、そこで懸命に生きる人間達の事を」
「『Zee』の犯行を止めない限りこの星の犠牲者は増え続けるだろう」
「ヤツを追跡(チェイス)する。手伝ってくれ、刑事君」
私はパトカーに乗り込んだ。
目的を同じくする ―――この奇妙な異星人(エイリアン)の『相棒』と共に。
「このレトロな車にはラジオしかついていないのか?私はクラシックが聞きたいのだが」
――やっぱり牢屋にブチ込んでやろうかこの野郎。
『組織:インサイド・ステイツ・オブ・アメリカ』の刑事であった探索者達は、指名手配中の凶悪殺人犯を追跡し取り押さえた。
その直後、仲間であった刑事が突如として銃を抜いて殺人犯を射殺、そのまま探索者に銃口を向けてきた。
引き金が引かれようとした瞬間、その場に乱入してきた一人の男によって探索者は命を助けられる事となる。
乱入してきた男は『光線銃』のようなものを刑事に向けて放つが、紙一重で当たらず刑事はそのままパトカーで逃走。探索者達の追跡虚しく刑事は姿をくらませてしまう。
男は『組織:ハロウィン』の特殊捜査官『エックス』と名乗り、探索者に衝撃の言葉を告げる。
「私はこの星の人間じゃあない。いわゆる…『異星人(エイリアン)』というヤツだ」
逃げた刑事に寄生している危険異星人【寄生体X『Zee』】を始末する、その為に力を貸して欲しい、と…エックスは探索者に協力を要請する。
『Zee』を討伐した時の探索者の生死によって報酬が変わってくる。
探索者が全員生存していれば、エックスの所属する『ハロウィン』から報酬が貰える。
探索者が犯罪者として扱われてしまった場合、ハロウィンが手を回してそれを取り消してくれるだろう。
自らの目的を果たしたエックスは、最後に探索者達を相棒と呼び『この体の彼を頼む』と告げて、宿主に全てのエネルギーを与え消滅する。
『約束』を果たしたエックスは、自分の意思でもうひとりの相棒…『宿主』の捜査員に命を託す事を決めたのだ。
エックスのエネルギーにより捜査官は命と自我を取り戻し…やがて目を覚ますだろう。
もし探索者に死亡者がいれば、エックスが自分のエネルギーを与えて自身の命と引き換えに蘇らせる。
自らの目的を果たしたエックスは、自分の『欲望のアニマ』と『意思』を『受け継いで』くれる相棒(探索者)に命を託す事を選んだ。
消える直前に『この体の彼を故郷に返してやってくれ』と探索者に託して消滅するだろう。後にはエックスの宿主の遺体だけが残る。
エックスの意思を受け継いだ探索者は、これからもこの国を守る『刑事(ポリス)』として戦い続けていくのだろう。
――口の中に血の匂いが広がる。
エックスに託された魔法とやらの効果はバツグンだった。
高笑いしながらマシンガンを乱射するあの悪女から『Zee』を引きずりだしてやったのだ。
あの女の口から汚らしい『Zee』が吐き出された ――瞬間。
私の腹にヤツの棘が突き刺さっていた。
――しくじった。
ヤツは耳障りな絶叫をあげながら私の体へと飛び移り触手で傷を抉る。
激痛と『Zee』の吐きかける汚泥のような口臭に意識が飛びそうになる。
歪む私の視界を ――怒りに歪むおぞましい化物の顔が覆った。
畜生め ――ここまでか。
途切れかけた視界の端に飛んでくる塊が映った。
私を庇って蜂の巣にされたはずのエックスが、私に何かを投げ渡したのだ。
相棒(エックス)のフェイザー銃 ――!
「撃て…相棒!!」
閃光が走った。
ほぼ無意識に、私の死にかけた体は銃を握り化物の顔面にソレをぶっ放していた。
閃光が止んだ時には ――私の体に張り付いていた化物が床に転がり炎上していた。
のたうち回るアバズレに向かって、空になるまでフェイザーを撃ち尽す。
くたばれ ――化物。
『Zee』が灰になったのを見届け ――私はその場に崩れ落ちる。
限界だ、私はもう助からない。
だが、やるべきことはやり終えた。
私達は刑事として、この世界の何よりも最低最悪な凶悪犯罪を阻止する事ができたのだ。
もうほとんど手も動かせない。意識がどんどん薄れていく ―――。
「『Zee』は死んだ。これで…私に与えられた使命は終わりだ」
「君が居なければ、私は永遠に使命を成し遂げられなかっただろう」
「ありがとう。私は…君という人間に会えたことを誇りに思う」
「 ―――さらばだ、相棒」
私は今、ロズウェルのある墓場に立っている。
最後に託された相棒の約束を果たすためにだ。
かつて私の相棒 ――その宿主だった男の遺体が目の前で埋められていく。
死にゆく私に『命を託した』相棒は。最後にこう言った。
『私の代わりに、この体の彼を故郷に返してやってくれ』
これで約束は果たしたぜ、相棒 ――。
すべてを見届けた後、私はパトカーに乗り込んだ。
胸には私の警察バッジ、そしてもう一つ。
秩序を守る者の証 ―――亡き相棒のエージェントバッジが輝いている。
この国に犯罪者共は腐るほど居る ――さあ、追跡(チェイス)を始めるぞ。
Illustrated by 接続設定
性別:不明(精神的には男性) 年齢:不明(外見年齢30)
STR16 CON13 POW18 DEX14 APP13 SIZ15 INT14 EDU20
HP14 MP18 SAN0 ダメージボーナス+1D4
アイデア70 幸運90 知識90
『組織:ハロウィン』に所属する特殊捜査官。
理知的で紳士的な物腰のフランクな男であるが、どこか常識に疎く浮世離れした一面を持つ。
静かなクラシックとアメリカンジョークをこよなく愛する。
その正体は『寄生体X』と呼ばれる異星人。
同種族である【寄生体X『Zee』】によって一族を皆殺しにされ、逃亡した『Zee』を制裁する為に地球に訪れた。
そこで『Zee』に襲われ瀕死の重傷を負ったハロウィンの特殊捜査員と出会う。
エックスは彼と『自分の体を譲る代わりに『Zee』の犯罪を止める』事を約束し、宿主としてその肉体に寄生した。
最初は約束やこの地球の事など気にもかけていなかったエックスだったが、この国で生活をし人間達と交流していく内にその気持ちに変化が訪れる。
種から与えられた『Zee』への制裁という使命以上に、この国とそこで懸命に生きる人間達を気に入り守りたいと考えるようになった。
秩序を守る者として目覚めた善なる意思を持つ寄生体X。
Illustrated by 接続設定
性別:女性 年齢:28歳
STR19 CON25 POW13 DEX16 APP17 SIZ14 INT14
HP20 MP13 ダメージボーナス+1D6
正気度減少:なし
装甲:フェイザー以外の物理ダメージは全て1となる。フェイザーによる攻撃は弱点であり『ダメージ+炎上』効果となる。
『Zee』に寄生されてしまったウォーカー空軍司令官。
元々は厳格な人物であったが、寄生されてしまったことで暴力的な快楽主義者へと変貌してしまう。
寄生体Xと半ば同化していることで、サブマシンガンを片手で軽々と扱えるほどの筋力と近接戦闘能力が強化されている。
常に銃を携帯しており、例えシャワールームで裸の状態でもサブマシンガンを傍らに置いて手放さない。
Illustrated by 接続設定
性別:不明(精神的には女性) 年齢:不明
STR10 CON10 POW13 DEX14 SIZ10 INT14
HP10 MP13 ダメージボーナス:なし
正気度減少:1D4/2D8
装甲:2(フェイザーによる攻撃は弱点であり『ダメージ+炎上』効果となる)
アンジェラに取り憑いた寄生体X。
『Zee』は寄生体Xの種族の中でも特に凶暴な個体であり、何体も同胞を殺した異端の『犯罪者』だった。
多くの同胞、そしてエックスの一族を手にかけた後、UFOを強奪し宇宙へと逃亡する。
やがて逃亡の末にUFOはニューメキシコのロズウェルへと不時着し、近づいてきた人間に寄生し人間社会に紛れ潜むようになった。
『Zee』に寄生された人物は、突如として人格が豹変、快楽主義者となり激しい暴力性と殺人欲を持つ犯罪者へと変貌する。また、『ドラッグ』や『派手なロック音楽』を好むようになる。
宿主を次から次へと変え、この地球で凶悪殺人を繰り返し続けている。
やがてアンジェラへと寄生した彼女は、空軍司令官としての立場を利用し基地の地下に保管される『UFO』を取り戻そうとする。
破壊されたUFOの内部にはこの国の半分を吹き飛ばせる程のエネルギーが眠っている。
『Zee』はそれを使いニューメキシコ全土を巻き込んでの大量殺戮を行おうとしているのだ。
ただ自分が快感を得たいが為に、その為ならば例え自分が消滅しようが関係ないのだろう。