ナイアル・オブ・パラダイスには、色んなお祭りやイベントがある。クリスマスはもちろん、お正月、バレンタインデー、復活祭(イースター)、夏祭りにカーニバルと、もはや何でもありだ。
祭りの元々の意味合いを尊重する人も居れば、とくに深くは考えず、単純に楽しむだけの人もいる。
そんな一年のお祭りの中で、ちょっと特別で、とても華やかなお祭りがある。
トリック・オア・トリート!そう「ハロウィン」だ!
子供たちがお化けの格好をして近所の家を回り「お菓子をくれないといたずらしちゃうぞ」と言って、お菓子をもらうのが有名だけど、混沌世界のハロウィンは、なにも子供たちだけのお祭りじゃない。
街中を行けば、子供だけじゃなく、色んな格好をした大人がたくさんいる。スタンダードにお化けの格好をした人、好きなアニメやゲームのコスプレをした人、クールで派手なファッションをキメた格好いい人。
リオのカーニバルやニューオーリンズで有名なマルディグラの格好をして、パレードを行ったり、お化けの格好をした人をゴーストバスターズの格好をした人がおふざけで追い回したりして、なんだかもう、とってもカオス。
お祭りをしてるのは街中だけじゃない。
ちょっと寂れた路地に入れば、ヴードゥーの魔女達が観光客相手にいつもより盛況な占いに興じたり、郊外のひっそりとした場所へいけば、なんだかよくわからない宇宙の神様を崇拝するオカルトめいた人達が「いあ!いあ!」言いながらタコのような像を称えてたり、荒野へ赴けばインディアンの人達が、いつもとは違う特別な格好をして、興味深い踊りをしている。
それを見ながら、ガンマンとインディアンが酒を酌み交わしている光景は、とても粋なものだ。
ここはニューメキシコ。
「死者の日」って知ってるかな?ハロウィンとちょっと似てる。
無くなったご先祖さまをお迎えするために、アルタールっていう祭壇に、遺影とかたくさんのお花とか飾ったり、お供え物をしたり…。
「お盆」?んー… 近いけど、雰囲気はちょっと違うかもしれないね。死者の日は、とっても盛大に祝うお祭りなんだ。町中にオレンジのマリーゴールドを散りばめて、とっても色んな露店が出て、ハロウィンと同じように仮装をしたりして、夜には演奏があったりして、とっても賑やか。
ハロウィンと時期も近いし、なんとなく似てるし、この世界では結構ごっちゃにして楽しんじゃうことが多いね。早いところでは、9月くらいから11月頭まで、お店に飾りつけがされたりして、毎日ハロウィンって感じ!
さて、探索者くん。君にこの祭りを案内したのは他でもない。ハロウィンや死者の日を、君がよりいっそう思い出に残るように、私が協力してあげるよ。
なに、結構?まあまあ、そう言わず。
ここまで付き合ってくれたんだから、最後まで見ていってよお客さん。
改めまして、私は「マディ・マルティグラ」。君と同じ、この世界に興味本位で足を踏み入れてしまった探索者だよ。
得意なことはヴードゥー。でも、この顔のメイクは死者の日。細かいことは気にしないで。尊敬する人は、マリー・ラヴォーと、チャールズ・デクスター・ウォード。
君はとってもラッキーだよ。ここ最近はお祭りのせいで、そこらじゅうに死者の魂が溢れている。そして私はヴードゥーの術を使って、死者の魂をこの身に憑依させることができるんだ。
なに、そんなに珍しいことじゃない。日本にはイタコって人がいるし、巫女もシャーマンもジャンヌ・ダルクも神の声を聞くことができる。民俗的でなくても、PKとかESPとか超能力で、死者と交信できる人もいるみたいじゃないか。この混沌の世界の有様に比べたら、死者と会話することなんて、とても平凡的なことだ。
とはいえ、特別なことでもある。どう?誰か話したい死者は居ない?
物凄い歴史や神話の有名人でも良いし、自分のご先祖さまがどんな人か知りたいでも良い。大好きだったけど、死んじゃった人やペットでも良いし、かつてロストした別の探索者でも良い。何のことかって?「第四の壁」のアウトサイダーに向けて言ったことだよ。君がそうじゃないなら、今のは聞き流して。
さて、どうかな?君は誰に会いたい?
秋ごろ、ハロウィンや死者の日などのお祭りで賑わっているナイアル・オブ・パラダイスの各地の景色を楽しみながら探索者達が歩いていると、一人の少女に声をかけられる。彼女の名前は「マディ・マルティグラ」。これらの祭りに詳しい彼女は、物珍しそうに周囲を見ている探索者が目に留まり、よかったら案内しようかと提案してくれる。ある程度案内が終わった後で、彼女は自分はヴードゥーの術の使い手であり、死者をこの身に憑依できる。探索者達に会いたい死者は居ないか?と提案してくる。<心理学>などで探るまでもなく、彼女が探索者達を案内した真意は、このヴードゥーの術に付き合わせたかったことだとわかるだろう。
マディは探索者達を案内し、死者と会話させてあげ、探索者達はマディのヴードゥーに付き合ったということで、このシナリオに報酬は発生しない。ハロウィンや死者の日のシーズンであれば、何度でも死者と会って、コミュニケーションととることは可能だ。
希望の人には会えた?そう、満足頂けた様で何より。
ところで今回は、ロアの力… ヴードゥーの神様の力を借りて、死者を憑依させていたんだ。参考までに神様のことについて、ちょっと教えてあげるよ。
今回力を借りたのは「レグバ」と「ダンバラ・ウェドゥ」っていう二人の神様。
「レグバ」は、どんな儀式を行うにもお世話になる神様で、人と神の領域を隔てる十字路の門番みたいな人だね。門番といっても大きくて屈強な感じじゃない。杖をついたみすぼらしい格好のおじいさんさ。駐車場とかアパートの管理人室で、新聞読みながらゆっくりしてるおじいさんいるでしょ。あんな感じ。
「ダンバラ・ウェドゥ」はイケメン。ハンサムでとっても穏やかで優しい。神々の中でも古参で、知恵もあるから、多分一番多く相談事とかで頼られてる神様じゃないかな。彼は先祖の力や知恵を象徴していてね。その力を借りて、今回は死者の魂と交信したわけさ。
本来なら「ダンバラ・ウェドゥ」じゃなくて「バロン・サムディ」に力を借りるはずだったんだけどね。
「バロン・サムディ」はなんていうのかな、煙草とか葉巻が好きで、おびただしい数の酒を飲む、ちょっと下品な性欲魔人って感じ。彼の方が死者との相性は良いんだけど、流石にこの身におろすのは抵抗があってねぇ…。態度があまりよろしくないから、真面目な死者には嫌われるかもしれないね。あと、何故だかたまに居ないことがあるみたい。まあ、もともと気まぐれなトリックスターみたいな奴だから大して気にしてはないけど。
こんなところかな。また死者と話したければ、いつでもおいで。
Illustrated by 接続設定 死者と話したければ、いつでもおいで。
ヴードゥーが関連しないことにはほとんど興味が無いヴードゥーオタク。ロアとの接触という呪文を習得して以来、様々な神をその身におろし、声を聞き、あらゆる本を読み漁り、空想や想像を広げることに没頭している。その一環でクトゥルフ神話の魔道書をそれと知らず読み、あげく「門」という呪文を習得して、盛大に失敗してこの世界にやってきた。一日研究で家に没頭したり、ヴードゥーの魔女達と女子会ならぬ魔女会をしたり、たまに外に出たかと思えば、インディアンの保留地に赴いて妖しげな儀式を一緒に楽しんだり、創作イベントなどにヴードゥーの同人誌を大量に持ち込み、信者(ファン)を増やすなどの布教活動を行ったりしている。ヴードゥーの第一人者ともいえる魔女、マリー・ラヴォーを崇拝している。推しは嫉妬の神「メトレス・エルズユリ」、美しい女神の派生の存在でリア充を妬むあたりがとても共感でき、かつそれでいて被虐性を煽るところがたまらないと鼻息を荒げて語るマディは、ちょっと引く