正解の無い混沌の時代に、はたして迷える子羊は、天使から何を授かれるのだろうか。

「聖ヨハネ座堂」だったか、「セント・ジョンズ教会 」だったか、香港にはステンドグラスが美しい、いくつかの古い西洋教会や聖堂がある。

それらは主に19世紀。阿片戦争で中国に勝利し、香港島を手中に収めたヴィクトリア朝時代のイギリスによってもたらされたものだ。

ネオン煌めく都市の喧騒と、雑居とした移民の溜まり場。欲と力と泥とが混ざり合ったような混沌都市で、その場所はまるでそこだけ隔離された別次元のように、荘厳なる佇まいと、神聖なる雰囲気を以って存在していた。

善良な市民は勿論、ヤクザも犯罪者も、権力者も宇宙人だって、国や宗教は違えど、そこはどういう場所であって、どう扱うべき場所か、どうあるべき場所かは、本能で理解していたからこそ、その領域を犯すことなく、その場所は暗黙の領域で守られていた。

「知ってるかい?こんな美しい聖堂だっていうのに、第二次大戦中は、香港を侵略した日本軍にクラブとして使われていたんだよ?」

戦争なんて、教科書に載ってる歴史の話で… 今もどこかの国が戦争をしていることは分かっているけれど、それはテレビやニュースの向こうの話で。

だけれども、この混沌都市に来てからは、それがもの凄く身近にあるし、戦時中に亡くなった方とも会うことがある。

それでも、やっぱり身近に争いを感じていながらも、それはもう過去の話だ。その戦争は遠い遠い昔の話だ。

「この都市にも日本軍の人はいるだろ。でも昔はどうあれ、今は目の前の神聖は守られている。それが答えなんじゃないか。」

「そうだね。」

こんな話に特に深い意味があるわけじゃない。別にステンドグラスが綺麗だとか、建築方法がどうだとか、どんな聖人がいただとか、何でも良い。そこで話される内容は、フレーバーみたいなもので、この喧騒とした混沌都市の中で、守られている神秘的な場所を見ると、ちょっと足を止める理由として、そんな話をする。ただそれだけのことだ。

それは別に、私が特別だったり、軍人や宗教徒が特別だったりすることでもない。だってここは、フランシスコ・ザビエルがユーチューブでバーチャル受肉して、その辺のJKとインスタで宣教活動してるような場所だ。誰もが特別じゃないし、誰もが普通でもない。

つまりは、ここで足を止めるのも、別に特別な事じゃないってことだ。

けれども、その夜は特別だった。

なんとなくフラリと立ち寄って、中のステンドグラスでも眺めようかなと思っただけで。

天使と出会うつもりは無かった。

その肌は乳白色のように綺麗で、まるで天使のようだと思ったけれども、羽も輪っかも無い。代わりに彼女の肘から先は生身ではなく、人形のように美しい義手だった。もっとも、混沌都市に天使が居ても、まったく驚きはしないけれども。

正解の無い混沌の時代に、はたして迷える子羊は、天使から何を授かれるのだろうか。ふと、そんなことを思う。

「コンバンワ。」

「…こんばんは。えっと、礼拝ですか?すいません、なんか邪魔しちゃって。」

「アナタは?」

「私ですか?私は… えっと、ちょっと立ち寄っただけみたいな」

「アナタは、ワタシを知ってイマスカ?」

「えっ…」

あぁ、これはアレだ。この世界では別に珍しいことじゃあない。

「キミどしたの?この世界に来たばっか?記憶喪失?この腕どうしたの?ロボット?妖怪?それとも過去の人?見た目は… どうかなあロシア系ぽいね。」

仲間が慣れた様子で、無遠慮に少女に矢継ぎ早に質問する。そうだ、この光景は珍しいことじゃあない。私も似たような感じだったかもしれないし、似たような人を何人か見たかもしれない。

私は、イップマンという方に助けてもらって、まだ運が良い方で、運が悪いと人によっては、その場で殺されたりすることもある。この子は運が良い方… なのかもしれない。わからないけど。

でも私達は助けられた側の人間で、私達もまた、道徳的に助ける側の人間に自然となっている。

「ワタシはガラテア。ガラテアと呼ばてたケド、ワタシは誰かは分からない。ワタシは、ワタシが誰なのか知りたい。助けテ。」

「ガラテア?ガラテアって… なんだっけ…。いや、思い出した思い出した!ギリシャ神話に登場したピグマリオンの奥さんだ。彫刻から人間になったやつだ。」

「あー、像に恋して、アフロディーテが人間にしてあげたのだっけ?」

私達は探索者なので、この程度の知識は嗜んでいる。

「にしても、意志が強い子だね。記憶喪失?かどうかは分からないけど、自分が知りたいから助けてなんて、そんな状態でなかなか言えるセリフじゃないよ。この子はきっと将来、優秀な探索者になる。」

確かに。私がこの世界に来た時なんて、記憶を失ってるわけでもないし、知ってることも過去の人に比べればそこそこあったのに、意味が分からなくて混乱してそれどころじゃなかった。あらゆる自由を与えられても、自分から動き出すことは出来ず、誰かに指示してもらったり、助けてもらわなきゃ何も動けなかった。

(この子は… 強い子だ。)

「そうだね。助けてあげよう。まずは、この子… ガラテアについて、知ってる人が居ないか探してみよう。」

「お?一人じゃ何をしていいかも分からない君も成長したねえ…。」

「茶化すなよ。正解が無い時代なんだから、行動するしかないってことが、合理的だって気づいただけだよ。さ、行こうガラテア。まずは君が覚えてることを少しでもいいから教えて。」

私は彼女に手を差し伸べ、その手を取る。

雪のように、白く美しいその手は、ひどく冷たく。まるで私の手も、凍りついてしまうようだった。

失われたガラテア

自分探しサブシナリオ

マクガフィン
少女ガラテア
目的
ガラテアが何者か調べる
障害
ガラテアは自分が何者か知らない
舞台
香港/中環(セントラル)/セント・ジョンズ教会、あるいは聖ヨハネ座堂 など

導入

探索者達は、香港の街中を歩いている時、その喧騒から離れて神聖さを守って存在している、聖堂あるいは教会にふと足が止まり、なんとなく立ち寄る。これ自体は決して特別なことではない。探索者達は、建物の中で、一人の少女と出会う。少女は自分で自分の事が全く分からない為、探索者達に自分が何者であるか探してほしいと、協力を持ちかけてくる。

障害の導線と解決

どこで
香港/中環(セントラル)
なにを
ガラテアについて

どうすべきか1「情報収集開始」
調べる。探索者がガラテアと一緒に外に出て情報収集を始めようとするかもしれないが、ガラテアは健常者のように満足に動けず、探索者が手を引こうものなら、たとえ力強く引っ張っていなくても、それに引っ張られて転んでしまう。ガラテアは、パッと見で義手であるということは見て取れるが、探索者達がガラテアを連れ出そうとしたところで、彼女はスカートを捲り、足も義足になっていることを見せてくれる。

ガラテアが満足に動けないことを探索者が理解しても、もしかしたら彼女を抱えて情報収集に臨むかもしれないが、探索者達が外に出たところで、周囲は先ほどよりもちょっと騒がしく、人々がまばらに一斉にどこかへ向かっていることが見て取れる。

それについて辺りの人の様子を窺ったり、聞き込みをすることで、なんでも近くで殺人事件が起こり、この辺りは危険なため、警察から避難勧告が出されたということが分かる。

KPはPLに、探索者とガラテアが一緒に行動して情報収集をしないよう誘導すること。ガラテアを聖堂に居るであろう神父や司祭に託したり、探索者達のなじみの場所に避難させておくなどであれば、問題無い。

探索者が殺人事件のことを調べるのであれば、香港警察や新聞社で何かしらの交渉技能に成功することで、「被害者が干からびて死んでいるため、犯人は吸血鬼のようだ」という情報を得ることが出来るが、この情報は調べなくても進行に問題ない。

どうすべきか2「マダム・タッソー蝋人形館」
改めて、ガラテアをどこかに置いて、探索者達だけで情報収集を始めると、香港の街は避難勧告のせいでひっそりとしているものの、自衛能力がありそうな人や、避難勧告を知らない人、あるいは変わり者の人などは、街でチラホラ見かけることができる。
それらの人に話を聞けば、香港最高峰の山である「太平山(ヴィクトリア・ピーク)」で、彼女を見たことがあるという証言を幾つか入手できる。

「太平山」は、直通のロープウェイで登れる観光地だが、それでも辿り着くのには体力が居る場所だ。

探索者達が「太平山」に辿り着いて、再び情報収集を行うと、「太平山」の観光地のひとつである「凌霄閣(ピーク・タワー)」の中にある、「マダム・タッソー蝋人形館」に彼女そっくりの蝋人形を見たことがあるという有力な情報を得ることが出来る。「マダム・タッソー蝋人形館」は、フランスの蝋人形彫刻家マリー・タッソー蝋人形館の分館で、マイケル・ジャクソンやレスリー・チャンをはじめとした、世界各国のスターや著名人の蝋人形100体近くが展示されている。
※「マダム・タッソー」については、<歴史>あるいは<芸術>などをロールさせることで、情報を与えても良いだろう。勿論、蝋人形館で直接調べたり、聞いたりすれば分かる程度の情報だ。

「マダム・タッソー蝋人形館」で、ガラテアのことを店員に聞くと、次のことが分かる。

彼女は「死蝋人形」で、本名は「アンナ・ネイガウス」という名のバレエダンサー。とても保存状態が美しくて価値があるため、好事家の間では「ガラテア」という愛称で知られていた。「マダム・タッソー蝋人形館」で、しばらく展示されていたが、少し前に忽然と無くなり、現在は紛失・盗難届が出されて捜索中。(※「死蝋」の意味について、探索者が知っているかどうか<歴史>あるいは<オカルト>をロールさせても良いだろう。)ガラテアを置いてあったであろうスペースが、ぽっかり空いていることも確認できる。

店員からは、ガラテアをどこかで見かけたのなら、是非持ち帰って欲しいと依頼される。

目的の導線と解決

どこで
香港/中環(セントラル
なにを
ガラテアの本名と正体

どうすべきか1「襲来」
ガラテアに伝える。探索者が「マダム・タッソー蝋人形館」で知ったことを、彼女に伝えるために戻ると、彼女の居る場所は何者かの襲撃にあったかのように荒らされている。

そして、彼女は意識を失って倒れ、彼女のすぐ傍に干乾びた人物が横たわっている。この干乾びた人物は、ガラテアを聖堂に残してきたのであれば、神父や司祭であり、探索者のなじみの場所に残してきたなら、その場に居ておかしくない人物とすること。どちらにせよ、今回のシナリオとは直接的には関係ない善良な被害者となる。

干乾びた人物は虫の息ではあるが、<医学>や<応急手当>を行うことで、一命をとりとめることが出来、体中の水分がほとんど尽きかけていることが分かる。この人物は虫の息であるため、今すぐに現状について何が起こったか、確認することは出来ない。

ガラテアに対しても、何らかの技能を試みることが出来るが、彼女の身体を治療しようとしたり、調べたりすることで、彼女の身体の四肢は義手義足の造り物であり、胴体部分は死蝋化した人間の肉体ということが、改めて確認できる。また、義手義足部分の治療には<機械修理>が必要であり、胴体部分を治療するには<医学>や<応急手当>以外に、死蝋に関する<歴史>技能が無いと、治療することが出来ないことがわかる。

もし、<歴史>と<医学>と<応急手当>と<機械修理>を持っている探索者が居れば、治療を成功することが出来るが、技能に成功しても失敗しても、彼女は探索者達が近くで、あれやこれややってることで目を覚ます。

彼女に現状について何が起こったか確認すると、急に触手が生えた恐ろしい化け物が目の前に現れて、気づいたらこの状態であり、この場所は非常に危険だということを教えてくれる。探索者が<クトゥルフ神話>技能を持っているならば、彼女の語る化け物の描写は、異次元の神話生物「アドゥムブラリ」と非常に酷似していることが理解できる。(しかし、このことを周辺住民に聞き込みをしたとしても、恐ろしい化け物の目撃証言は得られない。)

この場所か、あるいはどこかに避難した後で、探索者はガラテアについて分かったことを、本人に伝えるだろう。そうでなければ、ガラテアから探索者に、自分について何か分かったかということを質問させること。

探索者から自身のことを伝えられたガラテアは、この世界で一番最初に目を覚ました場所は「マダム・タッソー蝋人形館」であったことを思い出す。しかし、その後の記憶が曖昧で、気づいたら香港の聖堂に居たので、記憶を全て取り戻すために「マダム・タッソー蝋人形館」に連れて行って欲しいと探索者にお願いする。一人では満足に動けないガラテアの状態、そして恐ろしい生物が近くにいるかもしれないという状態であれば、探索者がガラテアのお願いを断ることは無いはずだ。

どうすべきか2「マダム・タッソー蝋人形館」
「マダム・タッソー蝋人形館」まで、ガラテアを連れていき、ガラテアを置いてあったであろうスペースまで辿り着くと、ガラテアは急に頭を抱えて苦しみだす。

探索者が心配して近づくか声をかけるかすると、ガラテアは急に恐ろしい速さで、近くの探索者の手を掴もうとする。探索者はDEX18との抵抗ロールに勝利すれば、ガラテアに掴まれることは無いが、失敗すると一瞬掴まれてしまい、掴まれた場所の水分が完全に枯渇し、1D3のダメージを受ける。成功した場合でも、一瞬かすってしまい、手の表面の水分が異常なまでに無くなってしまうことが見て取れる。

上記の処理が終わると、ガラテアはそれまでのガラテアとが違う化け物のようないびつな笑みを浮かべ「私は探求者、貴方たちを彼方へ送る探求者」と言いながら、敵意をあらわににじり寄ってくる。

しかし、探索者がそれに身構えたり、何かをしようとすると、ガラテアは再び頭を抱えて苦しみだし、それまでのガラテアの顔で「違う… 私は“アンナ・ネイガウス”。アナタは… アナタは誰!?」ということ言いながら頭を振り乱し、まるで解離性同一性障害(二重人格)に苦しんでいるような状態を見て取れる。そして、その言葉を言い終わると、再びいびつな笑みを浮かべ、探索者達ににじり寄ってくる。

以降は、戦闘ラウンドとして処理を行う。KPはPLに、探索者がガラテアに出来る次のことを伝える。「1.ダメージを与えて倒す」「2.ガラテアを説得する」。ガラテアの耐久力は10。DEXは18。回避はしない。奇数ラウンド、ランダムで探索者の一人に掴みかかる。探索者はDEX18との抵抗ロールに失敗してしまうと、掴まれた部分が干からびて、1D3のダメージを受ける。奇数ラウンドでは、<説得>の成功率が半分になる。偶数ラウンド、頭を抱えて苦しみだす。頭を抱えて苦しんでいる間は、<説得>の成功率が20%加算される。

「1.ダメージを与えて倒す」
ガラテアを破壊すると、戦闘は無事終了となる。探索者達の攻撃で、ガラテアの死蝋はバラバラになってしまうが、その後修復され、「マダム・タッソー蝋人形館」の死蝋人形として、再び展示されることになる。

「2.ガラテアを説得する」
ガラテアへの<説得>を三回成功しないと、彼女を完全に苦しみから解放することは出来ない。(この回数は探索者の人数と同じであることが好ましい。)。彼女を無事三回<説得>することが出来れば、彼女は苦しみから完全に解放されて、戦闘は終了となる。

報酬と真相

「1.ダメージを与えて倒す」で、クリアした場合
「1.ダメージを与えて倒す」で、クリアした場合は、報酬は「マダム・タッソー蝋人形館」の店員から貰うことが出来るが、ガラテアの人格は消え去り、事件の真相はさっぱりわからないまま終わる。
「2.ガラテアを説得する」で、クリアした場合
「2.ガラテアを説得する」で、クリアした場合も、報酬は「マダム・タッソー蝋人形館」の店員から貰うことが出来る。
戦闘終了直後はガラテアは気を失ってしまうが、しばらく休むと目を覚まし、探索者達に事のあらましを語ってくれる。
ガラテアは、香港の「マダム・タッソー蝋人形館」に存在していた「アンナ・ネイガウス」の「死蝋人形」を元に、ナイアル・ネオ・ファンタズマの人種でいう「死鬼(ファントム)」と「電影侠(アイロイド)」の掛け合わせのような、非常に曖昧な存在として目覚めた。
目覚めた当初のガラテアは、その存在としての身体である「器」が曖昧なだけでなく、意志や人格といったアイデンティティも曖昧であったため、「もう一つ別の人格」が入り込める余地を与え、度々乗っ取られることで、記憶も曖昧になってしまう。
「もう一つ別の人格」とは、異次元の世界に存在するクトゥルフ神話の神話生物「アドゥムブラリ」が、人間の精神という餌を獲得するために、次元を超えて使わされた「探求者(シーカー)」という使者の人格。使者は度々ガラテアの身体を乗っ取って、アドゥムブラリに餌をおくるため、人間を干からびさせるという殺人事件を起こしていた。
これまでは、ガラテアが「アンナ・ネイガウス」という自身について知らず、そのアイデンティティが曖昧であったため、使者はガラテアの身体を乗っ取れていたが、今回の一件で、自身のアイデンティティを完全に取り戻したため、二度と乗っ取られることは無くなった。
ガラテアが見た「急に触手が生えた恐ろしい化け物が目の前に現れて」というのは、ガラテアの身体の中に精神性を共存させている「探求者(シーカー)」が見ることのできる「アドゥムブラリ」の幻影(ヴィジョン)。
ガラテアにとっては、いわば「探求者(シーカー)」を通じて見た悪夢であり幻覚なのだが、ガラテアはそれが現実に現れたのだと錯覚してしまった。襲われたもう一人に話を聞ける状態になったら、化け物は存在せず、ガラテアに襲われたということが聞けるだろう。
ガラテアのその後の殊遇だが、警察に出頭したとしても、混沌都市の警察は死ぬほど忙しすぎて、反省してるならいいよ的な扱いで、こっちは新しい事件でそれどころじゃないと、適当にあしらわれてしまう。しかし、ガラテアは、それでは申し訳も納得もつけられないため、「探求者(シーカー)」の犯した罪を償うため、強い「意志」を持った探索者「アンナ・ネイガウス」として、混沌都市で人のために活躍したり、探索者達に協力したりして、この世界で生きていくことになる。

アンナ・ネイガウスガラテア

Illustrated by 接続設定 ワタシは、ワタシが誰なのか知りたい。

人種
死鬼(ファントム)&電影侠(アイロイド)
職業
自由人/フリーマン
拠点
香港/中環(セントラル)/マダム・タッソー蝋人形館
性格
観察者/強欲
イデオロギー/ピグマリオンの愛
同行時シナリオ中1回だけ、人形や機械、幽霊や妖怪などの、人間以外の意志や人格を持つ存在への交渉技能に+50%加算する。
主な習得項目
芸術、歴史、オカルト、ロシア語 など

今回のシナリオのオリジナルキャラクター。「曖昧である」ということと「求める」という二つの軸を持ったキャラクターで、フィリップ・K・ディックのSF小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」もとい「ブレードランナー」に登場するような、自身の存在性を求めるアンドロイドをベースに、クトゥルフ神話の神話生物「アドゥムブラリ」の使者である「探求者(シーカー)」と、香港にある「マダム・タッソー蝋人形館」と、ギリシア神話の「ピグマリオンとガラテア」を、コラージュのように繋ぎ合わせて、今回のシナリオとともに作られている。
シナリオとキャラクターを作る前に「トイ・ストーリー4」を見て、自分の存在性について探る、人形みたいなキャラクターの話を書きたいなと思ったのがきっかけ。

「正解が存在しない」というのは、最近のひとつのキーワードであるけれども、このシナリオの「ガラテア」は、正解が無い混沌都市で、自身の存在性も、アイデンティティも曖昧で、記憶も無いし、自分も動けないし、間違ったことを犯しいて正しいのか悪いのかわからない存在であるけれども、「自分が何をしたいのか」が明確になっているキャラクター。ある意味、混沌の時代を生き抜く理想の在り方のひとつなのかなと思っていますが、このシナリオでの探索者は、自由を与えられているし、自由に動けるし、自分がどこの誰かもわかっているけれど、「自由と言われても何をしたらいいのか分からない」という、対比的な人物を想定しています。

TRPGをしていると、「自由と言われても何をしたらいいのか分からない」というPLに出会う時もあれば、自分が陥ることもありますが、「自由が与えられてるけど、何をしていいのか分からない」のと「自由が無いけど、何をしたらいいのか分かる」のと、どっちが良いのかなみたいなことを考えて書いてみました。あなたは、どっちのタイプですか?正解は存在しません。

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